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春の雨、水槽の中。

『メランコリア』というタイトルの、美しい絵画があったような気がするんだけど、検索では見つからなかった。
捏造記憶かな?

時々、とてもリアルな夢を見る。
会社勤めをしていたときは、上司に報告をする夢とか。でも微妙に区別がついているのか、職場で相手と顔をあわせ、アレ言ったよね?と混乱するのだ。
だから、たぶん、私の記憶には現実に起こっていないことも混ざってるんだと思ってる。

脳の働きなのか、心の働きなのか、記憶は都合のいいように改変されたりするしね。
特に恋愛の、別れた相手との記憶などが顕著だというのは有名な話。


メランコリア。
言葉の響きに、ロマンチックさを感じて調べてみたら、ロマンチックではなかった。
私のイメージでは、“夢想”に近い。
ほんの少しの、気持ちの重さ━━うつむき加減になるような。伏せた睫毛。軽く開かれた唇。薄暗い雨の日に、ぴったりのもの想い。ほのかに甘く、アクセントていどの苦味もあって、全体にはまろやか。涼やかで、ところどころにぬくもりも感じるような。

江國香織『冷静と情熱のあいだ』の主人公は、雨が降ると鬱っぽくなってる。辻仁成版を読むと、その理由がわかる。
雨の日の憂鬱。
江國さんの、淡々とした静かな文章が好きだ。彼女の描く中心的な登場人物たちは、たとえ激昂したとしても、どこか抑圧されている。
まるで水槽の中にいるみたいに。


「女心と秋の空って言うけどねぇ、春だって天気は変わりやすいんだ。男心は春だねぇ」
名言だなと思った。タクシーの運転手さんには、哲学的な人も多いと聞く。
夜遊びの帰り、泥酔していても、運転手さんに話を振ってみると時たま興味深い話を聞くことができた。

4月に入ってから、曇天や雨が続いている。━━春の嵐。
春には、気持ちが浮き立つようなイメージもあるけれど、物憂さもある。
桜の花が開く頃には、雨が続く。━━花散らし。

心地よい、静かな雨。

雨がこんなに気持ちのいいものだと、忘れていた。
光に強くない目には、この薄明るさもちょうどいい。
お洗濯はたまるし、フローリングの床がペタペタすることもあるけれど、静かな雨の、気配のようなものに心癒される。


外に出ない私は、たぶん、多くの人とは別の時間の流れにいるのだと思う。
まるで水槽の中にいるみたいに。